Q18.日本皮膚科学会発表***ガイドライン
FAQ検索⇒  


日本皮膚科学会編「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」
<日本皮膚科学会雑誌110巻P1099ー1104、2000にて掲載>

日本皮膚科学会,アトピー性皮膚炎治療ガイドライン作成委員会
 川島 眞  瀧川 雅浩   中川 秀己   古江 増隆  飯島 正文
 飯塚 一  伊藤 雅章  塩原 哲夫   竹原 和彦   玉置 邦彦
宮地 良樹 橋本 公二 吉川 邦彦                 

1.はじめに

 アトピー性皮膚炎の診療の場において、特に治療上の混乱が生じているが、

皮膚科医の多くはアトピー性皮膚炎の病態に即した治療法に疑間を感じてい

るわけではない。すなわち、アトピー性皮膚炎を皮膚の生理学的機能異常を

伴い、複数の非特異的刺激あるいは特異的アレルゲンの関与により炎症を生

じ慢性の経過をとる湿疹としてその病態をとらえ、その炎症に対してはステロイド

外用療法を主とし、生理学的機能異常に対しては保湿剤外用などを含むスキン

ケァを行い、掻痒に対しては抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を補助療法として

併用し、悪化因子を可能な限り除去することを治療の基本とするコンセンサスは

確立されている。

 ところが、この理解のもとにアトピー性皮膚炎の治療に携わる皮膚科医が

現在困惑しているのは、治療の大きな柱であるステロイド外用剤に対して患者

さらには社会一般に根拠に乏しい不信感が生じ、ステロィド外用剤忌避の風潮が

強まり、必要かつ適切な治療を施せないままに重症化した息者が増加し、結果的

に患者に多大なる不利益が生じている事態に対してである。

 日本皮膚科学会理事長の諮問機関である「これからの皮膚科を考える会」

にて、この現状を改善することが日本皮膚科学会としての急務であるとの意見が

出され、その一環として「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」を作成し、基本的

治療法を社会に公知すべきとの合意が得られ、日本皮膚科学会理事会に具申

したところ承認が得られ、学術委員会の依頼により、以下のメンバーによる作成

委員会が組織された。

アトピー性皮膚炎治療ガイドライン作成委員会

     委員長 :川島 眞(東京女子医大)
     委 員 :瀧川雅浩(浜松医大)
           中川秀己(自治医大)
           古江増隆(九州大)
  アドバイザー:飯島正文(昭和大)
           飯塚 一(旭川医大)
           伊藤雅章(新潟大)
           塩原哲夫(杏林大)
           竹原和彦(金沢大)
           玉置邦彦(東京大)
           宮地良樹(京都大)
           橋本公二(愛媛大)
           吉川邦彦(大阪大)

 以上の経緯より、本ガイドラインは、皮膚科診療技能について充分に修得し、

アトピー性皮膚炎の病態を理解し、かつその診療においても充分な経験を有

する皮膚科医にとっては、その治療原則の再確認を促すものにしか過ぎないが、

それ以外でアトピー性皮膚炎の診療に関与する医師に対しては、診療の大前提

としての皮膚科診療トレーニングの必要性を説くものであり、患者ならびに社会に

対しては、日本皮膚科学会として現時点で適切と考えられる基本治療方針を提示

するものである。

 なお、平成11年に厚生科学研究班よリアトピ−性皮膚炎治療ガイドラインが

発表されたが、そのガイドラインは「アトピー性皮膚炎の診療に関わる臨床医

を広く対象として作成されたもの」であり、また「1カ月程度治療しても改善がみられ

ない場合は,専門の医師または施設への紹介を考慮する」と記載されており、プライ

マリーケアを担当する医師を対象に作成されている。一方、本ガイドラインは、

アトピー性皮膚炎の診療において、プライマリーケアの段階から高度の専門性が

要求される段階の患者までを診療する、皮膚科診療を専門とする医師を対象とした

ものであり、その存在意義は異なっている。

2.病 態

 表皮なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚

の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応

が関与して生じる、掻痒を伴う皮膚における慢性に経過する炎症をその病態と

する湿疹・皮膚炎群の一疾患である。

また、一般に慢性に経過するも適切な治療により症状がコントロールされた

状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患である。

3.診 断

 アトピー性皮膚炎の診断は、乾燥し鳥肌様のいわゆるアトピー皮膚の存在と

特徴的な湿疹病変から皮膚科医にとっては容易であるが、日本皮膚科学会の

診断基準(別添1)を参考になされて問題はない。

ただし、豊富な皮膚科的知識と診断能力をもって、除外すべき診断として

あげられた疾患を充分に鑑別でき、重要な合併症としてあげられた疾患につ

いて熟知していることが必要である。

4.重症度

 治療の主体である外用療法の選択は「個々の皮疹の重症度」によりなされる
ものであり、皮疹の重症度と皮疹の広がりから評価される「疾患としての重症度」
より決定されるものではない。
すなわち,範囲は狭くとも高度な皮疹には充分に強力な外用療法が選択されるが、
範囲は広くとも軽度の皮疹には強力な外用療法は必要としない。
よって、外用療法の選択の見地から言えば、以下の皮疹の性状の項目から総合的に
判断される「個々の皮疹の重症度」が最も重要であり、その判断を下せ、さらには
治療効果を予測しうるだけの皮膚科診療技能を有する医師によって重症度判定は
なされなければならない。
厚生科学研究班のガイドラインと本ガイドラインの最大の相違は、この重症度判定法で
あり、前者は「疾患としての重症度」により治療法を選択するのに比し、本ガイドライン
では「個々の皮疹の重症度」の判定が外用療法の選択の基準となっており、その相違
の生じる理由は「個々の皮疹の重症度」の判定には高い専門性が要求されるからである。

■皮疹の性状
 
乾燥,紅斑(腫脹/浮腫/浸潤の度合,苔癬化の度合) 丘疹(充実性,漿液性)
痒疹結節 鱗屑(粃糠状,葉状,膜様など) 痂皮(血痂) 水疱 膿疱 びらん 
潰瘍 掻破痕 色素沈着 色素脱失など

■皮疹の重症度
 
重 症:高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癖化を伴う紅斑 丘疹の多発高度の
    鱗屑 痂皮の付着 小水疱  びらん 多数の掻破痕 痒疹結節などを
     主体とする。
 
中等症;中等度までの紅斑 鱗屑 少数の丘疹 掻破痕などを主体とする。
     軽  症:乾燥および軽度の紅斑,鱗屑などを主体とする
     軽  微:炎症症状に乏しく乾燥症状主体

5.治療の目標

 治療の目標は患者を次のような状態にもっていくことにある。
 
1)症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法も
  あまり必要としない。

2)軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで、
  悪化しても遷延することはない。

6.薬物療法

アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患その

ものを完治させうる薬物療法はない。よって対症療法を行うことが原則となる。

 1)現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を充分に鎮静しうる薬剤で、

  その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤はステロイド外用

  剤である。その他の外用剤では、非ステロイド系消炎剤外用剤

  (NSAID外用剤)があるが、抗炎症作用は極めて弱く、接触皮膚炎を

  生じることがまれではなく、その適応範囲は狭い。

  さらに、最近使用が開始された外用剤として、移植免疫抑制薬タクロ

  リムスの外用剤がある。

  本剤は、成人のアトピー性皮膚炎のみを対象疾患としているが、

  特に顔面の皮疹に対しては、ステロイド外用剤のミディアムクラス以上

  の有用性を有しており、一過性の刺激感は高頻度に出現するものの、

  高い適応がある。

  しかし、本剤の薬効はステロイド外用剤のストロングクラスと同等であり、

  重症度の高い皮疹では十分な効果が得られない。

  また、現時点では小児のアトピー性皮膚炎での適応は有しておらず、

  すべてのアトピー性皮膚炎患者の治療に使用しうる

  薬剤とはなってはいない。よって現時点では、その使用にあたっては

  「アトピー性皮膚炎におけるタクロリムス軟膏の使用ガイダンス」

  (臨皮 53:1057−1068,1999)に忠実に従った使用が必要で、その内容が

  十分に理解できる高の専門性を有する医師による使用が前提となる。

日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎の定義・診断基準」

アトピー性皮膚炎の定義(概念)

「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰返す、掻痒のある湿疹を主病変とする

疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。」

アトピー素因:家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、

アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)、またはIgE抗体を

産生し易い素因。

アトピー性皮膚炎の診断基準

1.掻痒

2.特徴的皮疹と分布
 
 ・皮疹は湿疹病変
 ・急性病変:紅斑,浸潤性紅斑,丘疹,漿液性丘疹,鱗屑,痂皮
 ・慢性病変:浸潤性紅斑,苔癬化病変,痒疹,鱗屑,痂皮
 ・分布
 ・左右対側性 好発部位:前額,眼囲,口囲,口唇,耳介周囲,頸部,四肢関節部,
  体幹

  
 ・参考となる年齢による特徴
  乳児期:頭,顔にはじまりしばしば体幹,四肢に下降.
  幼小児期:頸部,四肢屈曲部の病変.
  思春期・成人期:上半身(顔,頸,胸,背)に皮疹が強い傾向.

3.慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する):

乳児では2カ月以上、その他では6カ月以上を慢性とする。

上記1,2,および3の項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー

性皮膚炎と診断する。

そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、経過を参考にして診断する。

除外すべき診断
 ・接触皮膚炎   ・汗疹
 ・脂漏性皮膚炎 ・魚鱗癬
 ・単純性痒疹   ・皮脂欠乏性湿疹
 ・疥癬        ・手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)

診断の参考項目
 ・家族歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎)
 ・合併症(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎)
 ・毛孔一致性丘疹よる鳥肌様皮膚
 ・血清IgE値の上昇

臨床型(幼小児期以降)
 ・四肢屈側型 ・痒疹型
 ・四肢伸側型 ・全身型
 ・小児乾燥型 ・これらが混在する症例も多い
 ・頭・頸,上胸・背型

重要な合併症
 ・眼症状(白内障,網膜剥離など) ・伝染性軟属腫
  とくに顔面の重症例         ・伝染性膿痂疹
 ・カポジー水痘様発疹症

 よって、アトピー性皮膚炎の炎症を速やかにかつ確実に鎮静させ、患者の

苦痛を取り除ける薬剤で広く使用でき、その有効性と安全性が十分に評価

されているものは現在のところステロイド外用剤の他にはなく、如何にそれを

選択し、使用するかが治療の基本となる。薬剤であるが故、ステロイド外用剤

には当然副作用、特に局所性の副作用はあるが、効果の高さと局所性の副作用

の起こりやすさは一般的には平行することから、必要以上に強いステロイド

外用剤を選択することなく、皮疹の重症度に見合った薬剤を適正に選択する

ことが重要である。従って、「個々の皮疹の重症度」に応じて次のような選択を行う。
 
重 症: 必要かつ充分な効果を有するベリーストロングないしストロングクラスの
     ステロイド外用剤を第一選択とする。 ミディアムクラス以下では通常充分な
     効果は得られない。痒疹結節でベリーストロシグクラスでも十分な効果が
      得られない場合は、その部位に限定してストロンゲストクラスを選択して
     使用することもある。

中等症:ストロングないしミデイアムクラスのステロイド外用剤を第一選択とする。
     ウィーククラスでは通常充分な効果は得られない。

軽  症:ミデイアムクラス以下のステロイド外用剤を第一選択とする。

軽  微:ステロイドを含まない外用剤(ワセリン、尿素軟膏、ヘパリン類似物質含
      有軟膏、亜鉛華軟膏、親水軟膏など)を選択する。

(参考)
 ステロイド外用剤のランク(別添2):武田の分類に追加して改変した。
 ステロイド外用剤の剤型:軟膏、クリーム、ローション、テープ剤などの剤型の選択は、
 病変の性状、部位などを考慮して選択する。
 
外用回数:1日2回(朝,夕:入浴後)を原則とする。ただし、ステロイド外用剤のランクを
      下げる、あるいはステロイドを含まない外用剤に切り替える際には、1日1回
      あるいは隔日投与などの間欠投与を行いながら、再燃のないことを確認する
      必要がある。

外用量: ベリーストロングクラスのステロイド外用剤の長期使用試験結果より、
       通常の成人患者では充分量である1日5ないし10g程度の初期外用量で開始し、
       症状に合わせて漸減する使用法であれば3カ月間使用しても、一過性で可逆性
       の副腎機能抑制は生じうるものの、不可逆性の全身的副作用は生じない。
      3カ月以上にわたって1日5ないし10g程度のステロイド外用剤を連日継続して使用
      することは極めて例外的であるが、そのような例では全身影響に対する十分な
       検査を定期的に行う必要があり、個々の患者でステロイド外用剤の減量を可能
       ならしめるような適切な対応が検討されるべきである。
      乳幼児、小児においては、より少量の初期外用量で通常開始されるが、体重を
       もとに1日使用量を成人での使用量から換算し目安とする。

外用中止:炎症症状の鎮静後にステロイド外用剤を中止する際には、急激に中止することなく、
       症状をみながら 漸減あるいは間欠投与を行い徐々に中止する。
       ただし、ステロイド外用剤による副作用が明らかな場合はこの限りではない。

乳幼児、小児:原則として、重症と中等症では上記より1ランク低いステロイド外用剤を使用する。

ただし、効果が得られない場合は十分な管理下で上記のランクのステロイド外用

剤を使用する。

顔  面:高い薬剤吸収率を考慮して、原則としてミディアムクラス以下のステロイド外用剤を
     使用する。 その場合でも1日2回の外用は1週間程度にとどめ、間欠投与に移行し、
     体薬期間を設けながら使用する。
     近年しばしばみられる成人患者の顔面の紅斑性病変の多くは掻破などを
     含むステロイド外用剤以外の要因に起因するものではあるが、いずれにせよ局所の
      副作用の発生には注意が必要な部位であり、処方に当たっては十分な診察を行う。
     なお、顔面はタクロリムス軟膏の高い適応がある部位であり、そのガイドラインに従
      って使用することも積極的に考慮する。

コンプライアンス:ステロイド外用剤に対する誤解(ステロイド内服剤での副作用との混同

およびアトピー性皮膚炎そのものの悪化とステロイド外用剤の副作用との混同が多い)

から、ステロイド外用剤への恐怖感、忌避が生じ、コンプライアンスの低下がし

ばしばみられる。

その誤解を解くためには十分な診察時間をかけて説明し、指導することが必要であり、

それが 治療効果を左右する。


ステロイド外用剤の副作用:ステロイド外用剤を適切に使用すれば、副腎不全、糖尿病、

ムーンフェイスなどの内服剤でみられる全身的副作用は起こり得ない。局所的副作用の

うち、ステロイド座瘡、ステロイド潮紅、皮膚萎縮、 多毛、細菌・真菌・ウイルス皮膚感染症

などは時に生じうるが、中止あるいは適切な処置により回復する。ステロイド抵抗性(運用に

よる効果の減弱)の事象も通常の使用では経験されない。 ステロイド外用剤の使用後に

色素沈着がみられることがあるが、皮膚炎の鎮静後の色素沈着であり、 ステロイド外用

剤によるものではない。 まれにステロイド外用剤によるアレルギー性接触皮膚炎が生じうる。

2)皮膚生理学的異常に対する外用療法
 

 ステロイド外用剤による炎症の鎮静が充分に得られた後に、乾燥およびバリアー機能の

低下を補完し、炎症の再燃を予防する目的で、ステロイドを含まない外用剤でのスキンケアを

行う必要がある。すなわち、軽微な皮膚症状に対しても外用療法を継続する必要があり、

これを怠ると炎症が容易に再燃し、ステロイド外用療法の意義の低下につながる。

1日2回の外用を原則とするが、再燃が生じないことが確認されれば漸減ないし間欠投与に

移行する。

副作用としての接触皮膚ステロイド外用療法に戻り、炎症の早期の鎮静化および維持療法へと

回帰することを目指す。

3)全身療法

 アトピー性皮膚炎は自覚症状としては掻痒を伴うことが特徴であり、その苦痛の軽減と
痒みによる掻破のための悪化とを予防する目的で抗ヒスタミン作用を有する薬剤を使用する。
抗アレルギー剤の有するケミカルメデイエーター 遊離抑制作用などのいわゆる抗アレルギー
作用は、外用療法の補助療法としての効果を期待するものであり、単独でアトピー性皮膚炎の
炎症を抑制しうるものではない。

7.悪化因子の検察

 患者と医師の間での信頼関係が構築され、上記の薬物療法が充分に行えれば、ほとんど

の例では治療の目標を達成しうる。達成しえない例では、悪化因子の検索が必要となるが、

年齢層 により関与が疑われる因子に若干の違いがある。

 乳幼児では、食事アレルゲンの関与がある程度みられる。それ以降では環境アレルゲン

(ダニ、ハウスダストなど) の関与が疑われ、その他、すべての年齢層で外用剤を含めた接触

因子、ストレスなどが悪化因子となりうるとされている。

 アレルゲンの関連性については、病歴、血液検査、皮膚テストなどを参考に、可能なもので

あれば除去ないし 負荷試験を行ってから判断すべきであり、例えば臨床症状のみ、あるいは

血液検査のみで判断されてはならない。

 また、アレルゲンを明らかにしえた場合でも、本疾患は多因子性であり、アレルゲン除去は

薬物療法の補助療法であり、これのみで完治が期待されるものではない。

8.心身医学的側面

 アトピ‐性皮膚炎の特に成人の重症例においては、人間関係、多忙、進路葛藤、自立不安

などの、アトピー性皮膚炎以外の心理社会的ストレスが関与し、嗜癖的あるいは依存症とも

呼ぶべき掻破行動が生じ、自ら皮疹の悪化をもたらしている例もまれではない。また小児例

においても、愛情の欲求が満たされない不満から 同様の掻破行動がみられることがある。

このような場合には、心身両面からの治療が必要であり、精神科医を含めたチーム医療が

必要となることもある。

9.生活指導

 ・入浴、シヤワーにより皮膚を清潔に保つ。
 ・室内を清潔に保ち、適温・適湿の環境を作る。
 ・規則正しい生活を送り、暴飲・暴食は避ける。
 ・刺激の少ない衣服を着用する。
 ・爪は短く切り、掻破による皮膚障害を避ける。
 ・ステロイド外用剤の使用によるためではなく、眼囲の皮疹を掻破、
  叩打により眼病変 (白内障、網膜裂孔、網膜剥離)を生じうることに 
   留意し、顔面の症状が高度な例では眼科医の診察を定期的に受ける。
 ・細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症を生じやすいので、皮膚をよい状態に保つよう
   留意する。

別添2

ステロイド外用剤のランク

ストロンゲスト
0.05% プロピオン酸クロベタゾール(デルモベートa)
0.05% 酢酸ジフロラゾン(ジフラールa,ダイアコートa)

ベリーストロング
0.1% フランカルボン酸モメタゾン(フルメタa)
0.05% 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン(アンテベートa)
0.05% フルオシノニド(トプシムa)
0.064% ジプロピオン酸パタメタゾン(リンデロンDPa)
0.05% ジフルブレドナート(マイザーa)
0.05% プデソニド(プデソンa)
0.1% アムシノニド(ビスダームa)
0.1% 吉草酸ジフルコルトロン(テクスメテンa, ネリゾナa)
0.1% 酪酸プロピオン酸ヒドロヨルチゾン(パンデルa)

ストロング
0.3% プロピオン酸デプロドン(エクラーa)
0.1% プロピオン酸デキサメタゾン(メサデルムa)
0.12% 吉草酸デキサメタゾン(ボアラa,ザルックスa)
0.1% ハルシノニド(アドコルチンa)
0.12% 吉草酸ベタメタゾン(ベトネベートa,リンデロンVa)
0.025% プロピオン駿ベクロメタゾン(プロパデルムa)
0.025% フルオシノロンアセトニド(フルコートa)

ミディアム
0.3% 吉草酸酢酸プレドニゾロン(リドメックスa)
0.1% トリアムシノロンアセトニド(レダコートa,ケナコルトAa)
0.02% ピパル酸フルメタゾン(ロコルテンa)
0.1% プロピオン酸アルクロメタゾン(アルメタa)
0.05% 酪酸クロベタゾン(キンダベートa)
0.1% 酪酸ヒドロコルチゾン(ロコイドa)
0.1% デキサメタゾン(デカダームa)

ウィーク
0.5% プレドニゾロン(ブレドニゾロンa)
1% 酢酸ヒドロコルチゾン(コルテスa)

10.その他の治療法

 その他の特殊な治療法については、一部の施設でその有効性が強調されているのみで

あり、科学的に有効性が証明されていないものが多く、基本的治療法を示す本ガイドライン

には取り上げない。特殊療法のなかでは、PUVA療法が一定の評価を受けているが、

一般的に行われるには別にガイドラインを設定する必要がある。

▲ページのトップへ